著書紹介 日野健太教授監訳『組織論のエッセンス』

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 経営学科の日野健太先生が監訳の『組織論のエッセンス』(同文舘出版)が出版されました。原書の 著者のメアリー?ジョー?ハッチ先生には 経営学部50周年を記念して本学で開催した組織学会研究発表大会で「組織文化と物的構造」というテーマで講演していただいたことがあります。

(講演の様子はこちら)

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(日野先生による内容の紹介)

 企業にも学校にも病院にも経営があるのと同じように,これらの集団はすべて組織(organization(s))です(企業は,組織のなかでも出資者に利益を還元するという特徴を持った組織です。)。

 たとえば,組織は,自らの仕事をうまく行うために,目標を定めたり,仕事の分担やリーダーを決めたり,建物を建てたり,自然発生的なルールを活用したりします。また同時に,組織の外側にある市場や技術などの環境は変化し続けているので,それに対応するように自らの仕事の進め方を変えたり,逆に新製品や新サービスのような変化を生み出したりします。このように,組織は実体概念としても,日産自動車や赤十字のような個別具体例としても,内側のさまざまなしくみ,また外側との関係として捉えることができます。本書は,まず「組織」を理解するためのさまざまな概念,分業や階層,文化や建物,デザインといった要因について説明しています。

 さて,概念としても個別具体例としても,組織はどうして現在の姿になったのでしょうか?提供する商品やサービスのラインナップも月日が経つうちに入れ替わっているはずです。そう考えると,常に変化し続けているダイナミックなプロセスとして組織をとらえる視点も必要です。これが,本書で言う「組織化(organizing)」です。ひとが友人や家族の考えていることを解釈しながら関係を取り結び,深化させていくのと同じように,あらゆる組織が顧客や従業員,社会の反応を解釈しながら,常に組織化を続けています。組織以上に組織化についても論じているところが,この本の第一のユニークさです。

 ひとが一人でできることは限られています。組織は,商品やサービス,教育などの成果を生み出し,組織の一員として働く経験を多くの人びとに与えることによって,世の中を豊かにしています。経営学の主流派は,この側面に光を当ててきました。

 と同時に,組織は,本書の言葉を借りれば「精神の監獄」の側面も持っています。「金太郎飴のような」は,組織が個性を失わせることを表したメタファーですし,非倫理的な経営者に盲従していることすら気がつかないメンバーが引き起こす問題は深刻です。というわけで,組織の持つ光の面にも影の面にもにも目配りしているというのがこの本の第二のユニークさです。

 このように,本書には,経営学を学び始めた学生諸君を含め,現在組織に身を置き日々組織化に取り組まれている卒業生,その他の方々が,組織を考えたり組織化を行ったりするのに役立つことがたくさん含まれています。私たち訳者は,特段の知識がなくとも読めるように,訳語を補ったり,適切な言い換えをすることに腐心しました。最後に,卒業生のみなさんは経営組織論の講義を懐かしく思いだしていただけると思います(さっそく,2007年卒業のSくんが,面白かったよと言いに来てくれました。ありがとう。)。お手にとっていただければ光栄です。

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著書リンク:同文舘出版

(K.H.)