研究レポート

DATE:2019.06.05研究レポート

青年のマーケティングへの興味は流通研究、そして地域活性化へ。ヒトを未来へ向けて元気にさせる。

経営学部 市場戦略学科 青木 茂樹 教授

人々を引っ張っていくには明確なビジョンを示し続けモチベーションを生む仕掛けが大事。
ゼミ生の評価システムを自らつくり、自転車イベントで地域を盛り上げる青木教授。どのような興味をもって研究者となり、活動しているのか、教授の実像に迫る。

恩師からの手紙

私は流通システム論を専門とし、「持続可能な生活創造へ向けたモノと情報の流通に関わる研究」とそのプロジェクト教育や社会活動をしています。とはいえ、研究者になることが夢だったのではなく、築地や札幌の魚市場を遊び場に育ったので「僕も商売人になる!」と言っていました。「商売人になるからには商学部だろう」と、大学へ進学したのですが、4年次まで真面目な学生とは言えませんでした。友人と家庭教師派遣ビジネスをしていたんです。

大学3年の頃、ある起業家から「ビジネスは、"つくる人?売る人?数える人"の三つが大切」と言われ、「今の派遣ビジネスには、数える人がいない!」と思いました。そこで「商学部なんだから、大学で会計を学べばいい」と気づき、授業に通ってみたんです。
後に恩師となる教授のマーケティングの授業を受けたら、すごく面白かった。教授に手紙で感動を伝えたら、すぐ「私のゼミに入れ」と返事がきました。4年次からゼミに入り、そのまま大学院に進学しました。

多元な価値との衝突

消費者行動などを研究していたのですが、「三つ子の魂百まで」と商売人の血がうずいてきて、「やはり、モノの流れが重要!」と、流通の研究を始めました。
山梨にいた2000年、大型店の出店規制がなくなりました。旧来の商店街は厳しい競争にさらされるので、各地で「市町村を活性化させよう」という動きが活発になり、私は甲府市の中心地を活性化させる委員を務めました。地域住民や地域史の専門家、環境や交通の専門家と激論するうちに、「商業からの目線だけで見ていた」ことに気づいたんです。そして、「郊外型大型店も魅力的だけれども、もともとその地域に根付いているものを日本の個性の一つとして残していけないだろうか」と考え、自分の気持ちも研究も大きく転換していきました。

地域を活かすツボ

NPO法人やまなしサイクルプロジェクトによる
「信玄公サイクルロードレース」
「地域ブランド創造」の一貫で、「NPO法人やまなしサイクルプロジェクト」を理事長として立ち上げ、年数回のサイクルイベントを開催しています。年々規模が大きくなり、メディアの取材も入るようになりましたが、最初は地域の人たちも「こんな田舎に人は来ないよ」とあきらめていたんです。しかし、教育も地域活性化も要は「ヒト」ですから、「こうしたら地域が良くなるよ」とビジョンを示して、ヒトのマインドセットを変えること、さらにはエンパワーメント(個々が能動的に動くこと)が重要なんです。そのために大事なのは「新たなビジョンを示し続けること」なので、私は常に旗を振っているんです。
NPO法人やまなしサイクルプロジェクトによる「信玄公サイクルロードレース」

日本という国には、四季があり、食の楽しみがあり、そして何よりすばらしいのは、それぞれの地域に文化が残っているということです。これを観光に転換するために、足りないのは情報発信と英語だと思っており、それは今後、若い人たちにどんどんサポートしてほしいところです。
世界では、ますます地域文化や食を楽しむツーリズムが広まっていくでしょう。情報を知るほど、人はその土地の風土を体感したくなる。これから「ますます面白い時代になる!」と確信しています。

学生に伝えたいのは、「駒澤大学での4年間で自分の意識改革をしてほしい」ということです。私も大学時代、恩師との出会いによって意識改革がなされたと思っています。駒澤大学の歴史?教職員?仲間から、未来創造に向けて共感できるものをご縁とし、自ら生き抜く知力?体力を養ってほしいですね。

未来を拓く個性

先日、「プロジェクトベースラーニングにおける相互評価によるルーブリック」を発表しました。これは、ゼミ生それぞれがアクティブラーニングを通して、どの能力がどれだけ伸びたかを評価するシステムです。なぜつくったかというと、グループ研究では、誰がどのような発言をし、研究を推進していったのか、各自のプロセスを知り得ないからです。そして、このシステムの本当の目的は、学生の個性を見出すことでした。

「プロジェクトベースラーニングにおける
相互評価によるルーブリック」画面(抜粋)
私は、この評価をもとに一人ひとりと面談します。皆がまんべんなく優秀である必要はなく、「どこに特化しているのか、どこを伸ばしたいのか」を話し合い、「自分の個性を理解し、適合する仕事に就こう」と促します。なぜなら、「10年後に主流となる仕事の65%はまだ存在していない」と言われる世の中にあって、現在の尺度で未来の仕事を考えてはいけないと思うからです。重要なのは「自分の個性を知り、伸ばし、適合する仕事に就くこと」。「適合している」と思えば、未知なる職業にも挑戦し、創造し、活躍できる、そういう能力を育てたいと思っています。

経営学部 市場戦略学科 青木 茂樹 教授
1968年千葉県生まれ。慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。南カリフォルニア大学マーシャルスクールオブビジネス研究員、山梨学院大学教授を経て、2008年駒澤大学経営学部市場戦略学科教授に就任。サステナブル?ブランド国際会議を日本に誘致し、アカデミック?プロデューサーなども務める。

※ 本インタビューは『Link Vol.9』(2019年5月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。

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