仏教行事のおはなし

本学教員が、身近な仏教行事をわかりやすく解説します。

DATE:2016.07.01仏教行事のおはなし

釈尊降誕会

仏教学部 教授 吉村 誠

釈尊(しゃくそん)は、紀元前5世紀にインドの釈迦族の王子として誕生した。伝説によれば、釈尊は兜率天(とそつてん)から白象に姿を変えて地上に降り、王宮に寝臥(しんが)するマーヤー夫人の胎内に入った。懐妊したマーヤー夫人が、月満ちてお産のため故郷へ向かう途中、花咲き誇るルンビニー園で産気づき、無憂(アショーカ)の樹枝に手を伸べると右脇から王子が生まれた。神々は母子を賛嘆して浄水を灌そそぎ、散華供養(さんげくよう)したという。  

釈尊の誕生を祝う降誕会(ごうたんえ)で、御堂(みどう)を花で飾り、誕生仏に甘茶を灌ぐのは、この伝説に由来する。  

不幸なことに、生母マーヤーは王子の誕生7日後に逝去した。その間の事情について仏 典は何も語らないが、成長した王子が「無常」を感じ、出家して修行の道に入ったのは、母の早すぎる死と無関係ではないだろう。  

しかし王子は、母がたとえ7日間でも全身全霊で慈愛を灌いだことも感じていたに相違 ない。「あたかも母が己(おの)が独り子を身命を賭(と)しても守るように、一切の生きとし生けるものに対しても、無量の慈(いつく)しみの心を起こすべし。」(『スッタニパータ』)釈尊は「慈悲」の心も母に教わったのである。

※ 本コラムは『学園通信322号』(2016年4月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。

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